2011年2月5日土曜日

安易な模倣は崩壊の始まり

が,今日5日の本田宗一郎氏の 日々のことば「挑戦」のことばでした.「苦しんでものを開発すれば、あとが楽になる。真似をして楽をすれば、あとで苦しむことになる。独自の創意を放棄した瞬間から、企業は崩壊の道を歩み始めるのである。」 という解説が添えられていました.
 このことばは,企業だけでなく,研究者にも当てはまると思います.発表の時に,どんなに目新しい研究に見えても,後日,同じような研究が既に公表済みであったことが判明すれば,その研究のオリジナリティは消えてしまいます.研究において,オリジナリティがないという事実は致命的だと思います.研究すること自体が無意味になると言っても過言ではないでしょう.私にとって,発表した論文が「オリジナリティがない」と言われることは,死ぬほど辛いことです.
 ただ,最近の学会は,オリジナリティをあまり重視していないのではないかと感じています.面白そうな論文が発表されると,その論文の成果を踏み台にし,当然予想されるその先の課題を先取りして取り組み,先行研究を引用することもなく,テーマ自体を乗っ取ろうとするような研究者が目につくようになってきました.当然,そのような行為は許されるものではなく,研究者倫理に反するものとして糾弾されるべきなのですが,波風立てるのを嫌ってか,なあなあで済ませようとする空気が支配的で,逆に問題を提起しようとする側が諌められるような状態です.このような学会に論文を発表することに意義があるのか,疑問に感じるようになってきました.
 私が理化学研究所で研究活動しているときにお世話になったN先生から「研究は,それを誰が何処でやったかを正しく理解し,その仕事に対して敬意をはらうことが,研究者としての最低限のマナーだ」と教えられたことを思い出します.引用するべき文献が足りないなどの不備が見つかると,本当に厳しく叱責されました.今の若い研究者は,このようなことを教わることがないのでしょう.これは,若い研究者を指導してきた教員にも大きな責任があると思います.私は,厳しく教えてくれる恩師に恵まれて幸運でした.ただ,このようなことを主張する研究者は,少数派になりつつあると感じています.41歳にして,消え去るべき老兵なのかもしれません.

2011年2月4日金曜日

平成22年度 修士論文審査会二日目

が,昨日から引き続いて行われました.普段は聞くことのないロボットや流体の研究室の発表を聞いていました.よく分からないからかもしれませんが,どの学生も,論文やプレゼンの完成度が高いと感じました.ただ,今年は発表できなかった学生が例年よりも多かったようです.事情は様々だと思いますが,気がかりな状況です.
 後は,来週の卒論発表会に向け,研究室全体火の玉となって,前進して行きたいところなのですが,肝心の教員筆頭(といっても一人だけしかいませんが)の私が,すっかりヘタレ気味です.学生の原稿を見るのが怖い… 誰か,喝を入れてください…

2011年2月3日木曜日

平成22年度 修士論文審査会

が,今日と明日の二日間で行われます.本日,私の研究室の修士2年筆頭(と言っても一人しかいませんが)のMD君が,「C-Spaceを用いた5軸制御加工のための工具経路生成法 ―スクエアおよびラジアスエンドミルによる加工への対応―」という題目で発表を行いました.
 会場配布用の資料を印刷しようと思ったら,研究室の3台のプリンタがトナー切れなどで全滅しているという事態に… 結局,私の居室のプリンタで印刷して事なきを得ましたが,必要なものは前日に用意しておきましょうね.
 13時半からの発表は,特に問題はありませんでした.質疑応答の時に,最初から前提としていない加工に「対応できないのか?」という質問が何度も何度もありました.「そういう目的は想定していないので,対応できません(する気もありません)」と答えるべきところでしたが,「今後の課題」みたいな言い方を始めてしまい,ドロ沼にはまりそうになっていました.私は,ずっと苦笑いしていました.それ以外は,終始,堂々とした受け答えで,よい発表だったと思います.
 彼も,2年間ずっと一人で,色々と大変なこともあったと思いますが,良い結果を出してくれました.修士の学生としては久しぶりに,学会の投稿論文としてまとめることができそうです.論文作成の作業のために,もうしばらく頑張ってもらわなければなりません.ちょっと,飲みに連れていこうかしら?(実は,自分が飲みたいだけです…)

2011年2月2日水曜日

踊り子

 卒研も佳境ですね.楽しいですよね.苦しいですよね.悲しいですよね.
 今日はネタがないので,私の知的生産システム研究室がまだ教員3人の体制だった頃,カラオケで同僚と熱唱していた,村下孝蔵の「踊り子」の替え歌の歌詞を紹介しましょう.「踊り子」を聞いたことがない方は,YouTubeなどで予習してから読んでくださいませ.

結果をださずにいつまでも暮らせない
バス通り裏の路地 行き止まりの研究だから

何処かに行きたい エアコンが利いている
暖かい所なら 何処ででも寝る

つまさきで立ったまま 君と研究してきた
工場の窓から 見ていた空が
踊りだす くるくると 軽いめまいの後
切粉をばらまいたように 心が乱れる

表紙のとれてる卒論だから かくしあい
ボロボロの結果だけ 語り合う日々が続き

坂道を駆ける子供たちのようだった
倒れそうなまま二人 研究していたね

つまさきで立ったまま 僕と研究してきた
狭い演台の上で ふらつく学生
やっている やってない 言葉をかえながら
かけひきだけのプレゼンは 見えなくなってゆく

つまさきで立ったまま 二人研究してきた
狭い演台の上で ふらつく学生
「若すぎた」それだけが すべての答えだと
涙をこらえたまま つまさき立ちの卒業

ららららーら,ららららーら...


どうも,今も昔も変わらないようです.ちょっと,安心しました.

2011年2月1日火曜日

日本の金型は圧倒的に世界一

 個人的な話で恐縮ですが,私の唯一の著作で,秀和システム社から刊行されている『図解入門 よくわかる最新金型の基本と仕組み』の第4刷が決まりました.第1刷が2,000部,第2刷が3,000部,第3刷が2,500部と,これまでに合計7,500部が発行されました.第4刷は何部になるか分かりませんが,もしかすると今回の増刷で一万部に届くかもしれません.2007年に発行したときは,こんなに多くの人に読んでもらえるとは思っていませんでした.読者の皆様には,心より御礼申し上げます.
 この本,本当にイラストばかりです.自分で描いたり,知り合いの方からいただいたり,許可をもらって流用したりと,入手方法は様々でした.文章を書くより,交渉の苦労の方が多かった気がします.著者というより,原作者のような気分でした.そんなこんなで,最後の章まで進んできて,自分の気持ちを正直に伝えようと,一番最後のページに書いたのが以下の文章です.

「ものづくりのあるところに、必ず金型があります。金型産業がないということは、ものを作っていないというです。金型産業が衰退していくをの黙って見ているのは、ものづくりを放棄したということです。厳しい状況にはありますが、たくさんの優秀な技能・技術者の真摯な取り組みに支えられている日本の金型産業は現時点でも圧倒的な世界一であり、その未来は決して暗いものではないと確信しています。」

 4年前に書いたものですが,今読んでみて,なんだか泣けてきました.今の日本は,ものづくりを放棄しようとしているのでしょうか?日本のものづくりは,消えてなくなるのでしょうか?この文章,なにも足さず,なにも引かず,いつまでも,このままにしておきたいと思います.