高千穂精機㈱は,1959年(昭和34年)の創業以来,試験と計測のための専門商社として,主に国内の官公庁・大学・民間企業の研究開発部門に対する,機器及びシステムの販売を生業としてきた.取り扱っている製品は,光学測定機器,材料試験機,環境試験機,電子計測器,非破壊検査機,形状寸法測定器,真空機器・装置,自動車関連試験機器,変換機,センサなど実に多用であり,現在の取引先は4,000を超えている.
入口のロビーに展示してあるスバル360は,社員教育の一環で,電気自動車化されたもの. |
2010年(平成22年)に多摩ブルー賞を受賞した 「超小型多目的全粒製粉装置」 は,素材本来の成分や風味,食感を損なうことなく,素材の100%を食料に転換するために,「美味しく食べる」 ことを追求して開発した製粉機である.古来より使われてきた 「石臼製粉方式」 に,保有している特許技術を大胆に取り入れ,挑戦的な製粉機を開発することに成功した.
店舗用として開発した小型の製粉装置は,高い性能ながら静音であり,現在店頭で使われているパン・蕎麦・ラーメン屋などに限らず,お茶・薬草・香辛料・豆類などの様々な分野で,挽きたて全粒粉を使用した安全かつ特徴のある商品を提供するために貢献するであろう.現在では,食品会社や外食産業,生産農家が自ら製粉することによって付加価値を高めた製品を提供できるように量産型の中規模製粉機モデルも開発しており,既に販売を開始している.
上の写真は,左から 「小型製粉装置」,「自動製麺機」,「十割そば用ミキサー」 で構成された,「高千穂式低温製粉 3点セット」 である.開発した製粉装置は,機械式であるにもかかわらず製品の温度を上げることはなく,石臼の10倍の速さでそば粉が挽くことが出来る.全粒粉で挽きたてのそば粉の香りは最高だそうである.個人的に一番驚いたのは,十割のそば粉を自動で捏ねるミキサーである.私は蕎麦にはうるさい方で,どんなに蕎麦を作る工程の自動化が進んでも,そば粉に水を足して捏ねる工程だけは自動化できないと思っていた.しかし,その工程を自動化する装置が現実に存在して,それを使って作られた十割蕎麦は,試食などでも好評であるとのこと.今回は突然の訪問ということで試食することが出来なかったが,機会があれば是非,ご相伴させていただきたい.
個別包装の製品が主流となっている現在,密封性を必要とするパッケージに漏れがないか確認する検査は,品質保証のために不可欠である.しかしながら,そのような 「リーク検査」 は,人による目視検査や官能検査が主流であり,個人差や誤判定が生じやすく,品質保証や安全性の面で問題となっている.
高千穂精機が,「ほんの少しお役に立ちたい」 という気持ちで開発したという 「パッケージ リークテスター」 は,検査時に製品にダメージを与えることなく,好感度かつ高速なリーク検査を可能にする.製品の形状や生産量などに応じて,専用のラインを提供することもできる.
2011年(平成23年),2年連続での多摩ブルー賞の対象となった 「GLT-8000ナイト」 は,特許取得済みである 「連続気体分析方式」 を採用したリークテスターである.気体の中でも非常に小さな原子であるヘリウムガスを数パーセント封入した後,シール不良やピンホールが存在する製品から漏れ出すヘリウムガスを瞬時に検出して合否を判定する.検出部の範囲内であれば,製品の大きさや形状を選ぶことなく,ベルトコンベアで検査部に製品を通過させるだけで,全数検査をすることが出来る.高千穂精機のオリジナル装置として開発されたモデルであり,今までにない検査装置となっている.
下の写真は,「連続気体分析方式」 の前に開発した,「圧力検出方式」 のリークテスターである.個別の検査容器に製品を入れ,任意の設定圧力まで吸引あるいは加圧した時に容器内に生じる圧力変動を計測することによって,合否を判定する.
高千穂精機の強みは,ユーザーとメーカーの間に入っている商社という立場を生かして,50年来の活動で積み重ねてきた,4,000社以上の取引先や,700~800社におよぶ仕入先メーカーとの信頼関係である.取引先との付き合いによって,ユーザー側のニーズを吸い上げ,得られた情報を取捨選択し,取引先メーカーと協力して装置を組み上げ,製品化を進める.ライバルになる可能性のあるメーカーとは,本来は相容れない存在なのかもしれないが,仕事を面白がってくれるメーカーを巻き込んで,お互いにいいとこ取りをしていきたい.
今後,技術的な裏付けの出来ない商社は生き残っていけない.それが出来る商社としての強みを生かし,メーカーと商社の機能を補完しあいながらやっていく.情報に対する感度,アンテナは常に高くしておかなければならない.そして,ネタをモノにするためのしつこさがあれば生き残っていける.それに対応できるだけのスタッフ,執念深いメンバを如何に確保するかが,これからの製品開発の鍵となりそうだ.
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