2013年5月21日火曜日

「㈱菊池製作所」を見る

「たまの力 ~多摩ブルー・グリーン倶楽部会員企業のNEXT STAGE~」 の取材のために,平成25年5月21日(火)の午前中は,東京都八王子市美山町にある 「株式会社菊池製作所」 を訪問しました.以下,執筆作業効率化の都合のため,「である」調で書かせていただきます.

  菊池製作所は,1970年の創業から三十数年,「あくなき挑戦で未来を切り開く」 をモットーに,開発・設計から金型製作,試作,評価,量産に至るまでの 「一括・一貫体制」 を確立し,ありとあらゆる分野の新製品開発をサポートしてきた 『総合ものづくり支援企業』 である.
  設計,金型製作,モールド成形,プレス加工,板金,切削,ハンドモールド等,多種多様な加工が要求される製品に対して,試作品の製作から始まり,製品化した時点での量産まで一括して受注することによって,高品質・低コスト・短納期などの厳しい条件を克服しており,現在でも多くの一流メーカーと取引をしている.3次元CAD/CAMのデータに基づいた部品加工,メタルインジェクション,マグネシウム成形など,次世代の部品や新技術の開発にも積極的に挑戦している.
 開発・設計部門と設計データをオンラインで共有する国内9ヶ所の工場に,約200機種,300台を超える加工機械を導入して,短時間で試作加工およびその評価を行える体制を確立している.見学させていただいた本社3工場の設備だけでも圧巻であったが,福島工場はこの数倍の規模というから,本当に驚きである.
V33の新品12台が並ぶ新工場
ロボドリル9台で構成される加工工場
アマダのベンダーマシンも並ぶ
 社会貢献の一貫として,独自開発商品の開発ならびに産官学での共同研究開発を積極的に行っている.本社敷地内に 「ものづくりメカトロ研究所」 を併設,大学の研究室や地方自治体,公的機関などとの連携による新製品および新技術の開発や,地域に密着したプロジェクトの推進に力を入れている.その活動範囲は,研究開発だけにとどまらず,開発したノウハウを生かしたビジネス面のサポートも行っている.企業の枠にとらわれない組織や人との交流によって,新しいアイデアが生まれる.

 「パラレルリンクメカニズム」 は,6つのモーターが並列(パラレル)に配置されたステージを,3次元空間上の任意のポイントに高精度に位置決めする機構である.この機構を応用することによって,パイプを3次元的に曲げる加工機械,「パイプベンダー」 を開発している.単純な円管だけでなく,断面が複雑な形をしたパイプでも自由に曲げることが可能となり,今まで複雑な形状のため量産が困難であった商品の領域を広げることができる.
ステージの回転によって,曲率の大きい曲げ加工が可能

 少子高齢化が進む社会のニーズに着目し,「医療・介護用ロボット」 の開発にも力を入れている.下の写真は,開発したパイプベンダーによって製作された部品を使用した 「肘装着ロボット」 である.スパイラル状の保持具によってふるえをしっかりと抑えつつ,筋肉の動作を筋電センサーで読み取りながら,肘の曲げ伸ばしをモーターの力でサポートする.
簡易的なパワードスーツといえる

 下の写真は,空気圧を利用した 「Muscle Suits」 である.私だけ実際に体験させていただいたが,重さ20キログラムのウエイトを,曲げた腰を伸ばすだけで簡単に持ち上げることができた.少し練習が必要と思われるが,このような腰の動きの繰り返しが予想される介護現場では威力を発揮するだろう.
実は,パワードスーツ初体験でした(笑)

 全自動の 「排泄処理ロボット」 である 「マインレット爽」 の製造も手掛けている.マインレット爽は,要介護者に紙おむつと同じ要領で専用カバーを装着してもらい,排便・排尿した際,おむつ内のセンサーが感知して,寝たままで排泄物の自動吸引と局部の洗浄・除湿ができる 「ロボット」 である.介護・医療分野に,「ロボット」 と名のつく製品が急速に普及しようとしていることを実感した.
たくさんの人を幸せにするロボットになると思います.

 取材前の調査で,本当にたくさんの成形技術を保持していることに驚いたが,試作を手掛けている以上,どのような加工にも対応できなければならないということで,トータル的にコア技術を拡充してきた結果だそうだ.そして今は,それらのコア技術をどうやって生かすかという段階である.その思いが,自社製品の開発に懸ける姿に表れている.
 これまでどおりユーザーから依頼される仕事に加え,自社のトータル技術,産学連携,産産連携を生かした製品開発,そして,それを販売していく,この三本柱で進んでいきたいとのこと.長い年月を掛けて確立された生産技術に基づいた製品開発,これぞ正しく 「Makers」 ではないだろうか.機会があれば,是非,福島工場を見学したい.
取材が長引いて,昼食までご馳走になってしまいました.

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