平成24年12月7日金曜日は,精密工学会 第357回講習会 「新素材カーボンファイバの製品活用 -新素材導入で一気にリード!」 を企画したグループのメンバとして司会進行をするために,中央大学の後楽園キャンパスに行って来ました.
ちょっと早めに会場に着くようにして,キャンパス入口の前にある 「小石川大神宮(こいしかわだいじんぐう)」 を参拝し,講習会の成功を祈念しておきました.
講習会の内容はテーマのとおり,炭素繊維及び炭素繊維複合材料の現状と将来,航空機用CFRP構造のCAE解析,CFRP加工技術,FRPを活用したスポーツ製品の開発事例,CFRPのCAE解析技術と,カーボンファイバのみを対象に尖ったものでした.
今,カーボンファイバで作られている代表的な製品といえば,やはり航空機でしょう.総重量の12%にあたる10トンのカーボンファイバが使われたボーイング777から,最新の787は,50%で35トンものカーボンファイバが使われています.硬くて強いうえに軽量であり,30年は劣化しないというカーボンファイバは,航空機の材料としては最適です.現在は,自動車の素材としての適用が世界中のメーカーで検討されていますが,もし,日本で生産される自動車をカーボンファイバで作るとなると,年間100万トンのカーボンファイバが必要となるそうです.しかし,現在の国内で生産されているカーボンファイバは10万トン弱ということで,まだまだ対応できそうにありません.カーボンファイバ生産については,「生産性と易加工性」「低コスト」「安定供給」「省エネルギー・環境調和型」「リサイクル」など,まだまだ課題が多いようです.しかし,拘束成形,接合,リサイクル性に優れた「熱可塑性CFRP」が開発されつつあるということで,ちょっと期待できそうです.
午後は,昨日の型技術協会の委員会でも一緒だった,農工大のSSHR先生が,CFRPの加工技術について講演されました.相変わらずのソツのない話しぶり,さすがです.ここまでの進行を振り返って,型などを使った成形技術についての話題提供があればと思いました.北京オリンピックの女子ソフトボールで,日本代表が使ったもの同じバットを拝見しました.バットは,硬いものの方が打球が飛ぶと思っていましたが,反発性能は衝突物(ボール)と非衝突物(バット)の固有振動数が近いほど高まるのだそうです.スポーツ用品も,なかなか奥が深いですね.
講習会自体も勉強になりましたが,講習会後に行われた「名刺交換会 交流会(参加費無料)」では,講師の方だけでなく,参加してくれた専門の方からも意見を聞くことができて,これも大変勉強になりました.確かに,現在のカーボンファイバ生産量の世界シェアは,日本が7割と圧倒的だそうですが,カーボンの年間消費量については,2万トンでトップのヨーロッパの次は,1万トンの中国だそうです.アメリカは8千トン,日本は5千トン.素材に付加価値を付けて儲けるというやり方は,日本だけのものではないというより,一番モノを作っている中国のものとなりつつあるようです.さらに,中国におけるカーボンファイバの生産量は急増しつつあり,飛行機部品などはともかく,スポーツ用品などのような嗜好品の材料ならば,中国製のもので十分とのこと.東レや帝人も,安泰というわけではありません.
カーボンファイバについて体系的に学ぶことができて,充実した一日となりました.やはり,内容を一つに絞った講習会の方が,記憶に定着するような気がします.ただ,多くの人が興味を持つようなテーマを見つけることが,本当に難しいのです.企画する側として,苦難の日々が続きそうです.
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿