㈱杉山チエン製作所は,1946年に自転車やオートバイのためのチェーンのメーカーとして創設して以来,JISおよび英国スタンダードのローラチェーンなどの動力伝達用各種ローラチェーン,ダブルピッチローラチェーン,リーフチェーン,エンジニアリングチェーン,その他特殊チェーンに至るまで,数千種類におよぶチェーンを開発してきました.
一般的なローラーチェーンは,ピン,ブシュ,ローラー,内・外プレートの5種類の部品で構成されており,各部品には100分の1ミリメートルの精度が要求されます.そして,それらの部品を生産する金型には,さらに一桁下のマイクロメートルレベルの精度が必要となります.杉山チエン製作所では,早くから金型の内製化に取り組み,精密金型製作について独自の技術を確立しています.また,ピンに特殊処理を施すことにより,従来品と比較して,疲労強度を約30%高めることができました.この表面処理技術については,海外数ヵ国で特許を取得しています.
豊富な経験と技術に裏打ちされた,部品の成形,熱処理,組立に至るまでの一貫生産をベースに,絶えず品質改良に努め,工程を合理化し,均一かつ高品質な製品を生産してきました.現在では,総合チェーンメーカーとして,国内はもとより,米国,カナダ,欧州,オーストラリアなど,海外においても高い評価を得ており,生産されるチェーンは,品質,性能,耐久性について,世界の一級品として格付けされています.
生産されたチェーンは,各界で広く貢献しています.標準ローラーチェーンを改良した 「ダブルキャパシティチェーン」 は,2010年に発生したチリ落盤事故で,遭難者33人を最初に発見することになる直径6インチの穴を開けた掘削機に使用されていたそうです.
ダブルキャパシティチェーン.奥は,チリ落盤事故で活躍したチェーンと同じもの. |
世界に先駆けて1987年に発売した 「SBR(Solid Bush and Roller)ローラーチェーン」 は,従来の巻ブッシュに替わって,シームレスのブシュとローラーを採用したローラーチェーンです.棒状の鋼材を冷間鍛造することによって製作されるブシュやローラーの形状が,より真円に近づくため,耐摩耗性が飛躍的に向上,従来の巻ブシュ型ローラーチェーンの約2倍以上となる長寿命を実現することができました.苛酷な強度テストもクリアしており,安定した性能を発揮します.
取材に対応していただいた代表取締役会長である杉山愼一郎さんからは,自社製品に対する強い自負を感じました.これからも品質を第一と考えて,「寿命(Life)」,「疲労(Fatigue)」,「破断強度(Tensile strength)」 にこだわり,ブランド力のあるチェーンを開発,生産してきたいとのこと.ありふれた要素部品と思っていたチェーンの奥深さを感じる取材となりました.
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