2013年8月5日月曜日

「零式戦闘機」を読む

「零式戦闘機」 という文庫本を,土曜日の午前に書店で購入し,先ほど,読み終わりました.小さな活字で,400ページを超えるノンフィクション,こんなに手強そうな本を,こんなに短時間で完読できるようになったのは,正しく,最近導入したリーディンググラスのおかげです.
  著者の柳田邦男氏は,日本を代表するノンフィクション作家です.航空機事故,医療事故,災害,戦争などのドキュメントや評論を数多く執筆しています.中学校の頃の友人が,先月封切りされたジブリの 「風立ちぬ」 を観たことをFacebookに投稿した時に,中学生の時に一緒に観た 「零戦燃ゆ」 という映画のことが話題になりました.この 「零戦燃ゆ」 の原作の著者も,柳田邦男氏です.映画の印象は,「連合艦隊の方がよかったな」 というぐらいでしたが,原作は読んでいないことに気が付いて,さっそくAmazonで検索してみたところ,既に絶版となっていました.しかし,それより前の作品である 「零式戦闘機」 だけは,まだ刷を重ねていることが分かりました.書店に行くと,「風立ちぬ」 の影響で新設された 「零戦コーナー」 にあるのを見付けたので,衝動買いして,早速,読んでみたというわけです.
  それにしても,このオビ,ぜんぜんカバーに合っていませんね.『映画「風立ちぬ」主人公のイメージを形作った実在の零戦設計士、堀越二郎。その不屈の闘志を描くノンフィクション』 と書いてありますが,この本からは,堀越氏の「闘志」というよりも,強い「覚悟」と「意志」を感じました.飛行機を愛でるという気持ちよりも,飛行機に真剣に向き合うエンジニアの魂を感じました.ノンフィクションらしいというか,事実を淡々と述べるという文調なのですが,だからこそ,著者が時々述べる私見が良いアクセントになっていて,大変印象に残りました.零戦は,資源も手段も限られていた技術後進国で,出来る事のすべてを徹底してやり遂げた究極の結果であるということ.どんなに苦労してやり遂げた最高の仕事でも,世に出てしまえば,すぐに過去のものになってしまうということ.休むことなく,次から次へと新しいことに挑戦していかなければならないということ.エンジニアとは,なんと険しい道を往くのだろう.

  結果的に,私にとって,大変な良書となりました.資源も手段もたくさん用意されている現代の我々は,もっともっと頑張らなくてはいけませんね.逆に,少し不利な体制の下で,ハングリーにやった方が突き抜けるのでしょうか? そして,やっぱり,開発という仕事は面白いと思いました.

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