池井戸潤さんの第145回直木賞受賞作 「下町ロケット」 の文庫版を,先週,読了していました.この小説の単行本が発売されたのは3年も前ですが,その頃から中小企業の皆さんが話題にしていて,読みたい,読みたいと思っているうちに,昨年末になって,とうとう文庫版が出版されてしまいました.「いい加減に読め!」 ということで,大学生協で買っておいたものです.出だしのエピローグの印象からは,ちょっと読みにくいように感じましたが,読み進んでいくうちに,どんどん引き込まれてしまい,平日の三晩だけで読み切ってしまいました.この小説,面白いと思います.
まず,人物の相互関係が,とっても分かりやすいです.絶対悪の存在がはっきりしている.これは,同じ池井戸潤さんの小説が原作になっているテレビドラマ 「半沢直樹」 にも共通していると思います.敵対する人物が,次々と折れていく様子は,痛快です.
ただ,こんなにうまくいくことはないだろうとも思いました.確かに,中小企業も開発はした方がよいということは間違いありません.しかし,この小説のように,大企業が何億も使用料を支払わなければならないような特許を持つには,開発のための時間と費用はもちろん,開発と特許に携わる優秀な人材の確保と,それら人が開発や特許の仕事に専念できる余裕が不可欠です.そして,そのような環境が整っているということであれば,その会社はもはや中小企業ではなく,大企業だと思います.
池井戸さんの作品は,自分ができないようなことを実現してくれるから,読んでいて嬉しくなるのだと思います.でも,色々な登場人物を自分と重ねあわせながら,読んでいるうちに,不思議と元気が出てきます.正しく,「エンタメ」 です.読み終わった後の爽快感が,なんとも言えない.他の作品も,どんどん読んでいきたいと思います.
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