今日,朝日新聞に博士課程を修了した人の受け皿が十分でなく,厳しい状況にある研究者が多いと言う特集記事が掲載されていました.日本の博士の学位取得者は,海外の先進国と比較して決して多いというわけではないのですが,それでも学位取得後の職場がないという話はよく聞きます.でも,これは分野によって違う話だと思います.
たとえば,私が専門としている生産システムや工作機械の分野は,私の年代に比べれば若い研究者が多くなってきましたが,それでも十分な数とは言えません.大学や研究所のポストもたくさん公募されていますし,知り合いの先生から学位を持っているいい人がいないかと,毎年問い合わせがあります.でも,紹介できる人がいないのです.
博士の人は,知識が専門的なものに偏っていて,コミュニケーション能力が不足していると思われているようです.耳の痛い話です.こういう話を聞くと,スペシャリストではなく,バランスの良い研究者が求められているように思いますが,一つのテーマに徹底的に取り組ななくては学位は取れないと思います.
私見を述べさせていただくと,社会に貢献することが明らかで企業からも評価される研究テーマに取り組むこと,学生のうちから企業の人と議論する機会が豊富にあり,コミュニケーション能力を磨けることが大事ではないかと思っています.この考え方には大反対という大学の先生が多いこともよく承知しています.歴代の著名な学者は,役に立つとか立たないとか,そんなことを考えて研究していた人ばかりではありません.
でも,これは私の分野では普通のことで,逆にそのようにできない人は評価されません.こんな学問があってもよいのではないかと思っています.少なくとも,学位を取った人の受け皿がないなんてことはありません.ですから,不本意ながらポスドクになってしまったなんて人を聞いたことがありません.学生のころから大学,研究所,企業など色々な人と知り合いになって,自然と進路が決まっていくようです.人数が少ないから大事にされているだけかも知れませんが,私の分野では将来を心配して博士課程進学をあきらめる必要はありません.学生の皆さんは,選択肢の一つとして考えてみて欲しいと思います.
2009年1月18日日曜日
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