2008年12月20日土曜日

"milestone"と言える論文

 今日,中国の Shanghai Jiao Tong University の学生から,私の英語論文「Tool path generation using C-space for 5-axis control machining」を読んで,2006年に発表した国際会議プロシーディングに載っている論文「Optimum Tool Path Generation for 5-Axis Control Machining Considering Change in Tool Attitude for Whole of Machining Surface」にも興味を持ったので,論文を送ってくださいというメイルをいただきました.とりあえず,PDFファイルを送ってあげました.
 最初の論文は,アメリカ機械学会 ASMEの「Journal of Manufacturing Science and Engineering」に1999年に掲載されたものです. http://www.ims.mce.uec.ac.jp/papers/cam/5axis/1997-11e/index.html この論文を投稿したのは1997年だったので,掲載までにほぼ2年かかったことになります.ASMEのJournalに投稿するのは大変な仕事だとは聞いていましたが,二人のレフリーと一年近く手紙をやり取りしながら論文を修正していき,ようやく掲載されたころには,既に自分にとって過去のものとなっていました.Journalが送られてきたときは,どうでもいいような気持ちだったのですが,掲載されている自分の論文を見ると,大きな達成感を感じました.
 このぐらい有名な Journal に載ると色々な人に読まれるようで,海外からたくさんの問い合わせを受けました.今回のような個人的なものだけでなく,アメリカの大学からはミーティングで紹介してみんなで読みたいのでコピーを配布してよいか,といった問い合わせもありました.ベルギーに留学した知り合いの先生からは,あちらの大学の学生が熱心にこの論文を研究していて,内容について絶賛していたというようなことも聞きました.今年になって,何気なく Google Scholar でこの論文を検索したところ,想像以上に多くの論文で引用されていることに驚きました.
 今回のメイルにも "a milestone method to automatically generate tool path for 5-axis machining" と,お世辞のようなものが書いてありました.研究者にとって,論文は研究が終わった後の排泄物のようなものですが,節目できちんと世の中に発表することは大事なことですね.そのうち,この論文以後の研究結果をまとめた "milestone" 的な論文を発表したいものです.

2008年12月19日金曜日

学生実験の10年間を振り返って

 本日を持って,担当している学生実験が終わりました.後はレポートの提出を待つばかりです.
 CAMのテーマを担当するようになって今年度で10年目です.このテーマは,一週目で3次元CADの実習を行い,二週目でCAMとNC工作機械を利用した加工を体験させます.初年度の途中から作品をWebにアップしてきました.http://www.ims.mce.uec.ac.jp/m-shige/ex/gallery/index.html
 10年間の作品を見ながら振り返ってみると,最初は内容も手探りの状態で,CADのライセンスも二つしかなく,一班六人で一つしか削ることができませんでした.CADの端末もMachintoshが四台だけで,三人一組で作業させていました.途中でライセンスを三つに増やして二人一組となり,2003年度からは計算機室の端末が学生になじみのあるWindows PCに替わりました.2006年度からは工作機械もアップグレードして加工時間が短縮され,一班三個の成形が可能になりました.そして今年2008年度から3次元CADをSolidWorksに変更し,全員が自分の形状を作成できるようになりました.
 今年度の学生実験は本当に充実していました.10年間で完成に近い内容に成熟したと感じています.感無量です.これまでTAをしてくれた OG君,HN君,KB君,IZ君,NM君,WY君,ST君,AY君,KK君,YG君,本当にありがとうございました.皆さんが熱心に対応してくれたおかげです.心よりお礼申し上げます.

2008年12月18日木曜日

不景気です(1)

 今日の午前中は,東大本郷で国際会議実行委員会の幹事会だったのですが,雑談の中で最近の不景気のことが話題になり,これまでの円高で企業が挙げた利益はどこにいったのか,という話になりました.どこかに貯めこまれているのなら,こういうときにこそ放出して雇用を維持するべきで,そういうことをしないで非正規社員を大量に解雇するなんておかしい,ということです.企業にも色々と事情があると思いますが,本当にどうしようもないのでしょうか.
 大学に戻ると,ネットニュースでアメリカのクライスラー社が,ほとんどの工場の操業を一ヶ月間停止することを決めた,というニュースを見ました.GMとクライスラーの合併話も復活したとのこと.Big3には破綻も視野に入れた動きも見えるようです.一つぐらいは消えそうです.
 加工貿易で成り立っている日本にとって円高はありがたくないので,経済界などの要望を容れて,無理やり円安にしてきたのですが,相手のアメリカがあの調子では,もう不自然な円安は維持できないようですね.産業,政治,経済,どれもこれまでのやり方が通用しなくなり,大きな転機に来ているように感じます(つづく,かもしれません)

2008年12月17日水曜日

漢字も,おもしろいですね

 DSで脳トレをやるようになってから,すっかりはまってしまい,続編の「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」も購入してしまいました.これは漢字を利用したトレーニングが多いです.典型的な理系人間なので漢字はあまり得意な方ではないのですが,ゲームでやってみると,漢字も結構おもしろいですね.知らないうちに勉強しています.トレーニングの中に,四字熟語の四文字の中でブランクになっている一文字を書くというというものがあります.私は結構読書家だと自負していたのですが,見たこともない四字熟語がいくつか溜まってしまいました.復習のために,リストにして確認しておこうと思います.意味は【学習研究社 学研 四字熟語辞典】で調べました.

【色即是空】しきそくぜくう
仏教で,この世に存在する形あるすべてのものは,実体のない仮の姿であるということ.

【勧善懲悪】かんぜんちょうあく
善行を勧め,悪行を懲らしめること.

【疾風迅雷】しっぷうじんらい
勢いや行動がすばやいようす.

【付和雷同】ふわらいどう
自分にしっかりした定見がなく,他人の意見や行動に軽々しく同調すること.

【天衣無縫】てんいむほう
詩文がわざとらしくなく,自然に美しくつくられていること.また,人の性格や言動が,飾り気がなく純粋であるようす.

うーむ,語源が知りたい.今後も脳トレネタの投稿があるかもしれません.

2008年12月16日火曜日

日産自動車 横浜工場見学

 今日の午後は型技術協会 金型多軸加工研究委員会の会合で,生麦にある 日産自動車 横浜工場 パワートレイン開発本部 を見学してきました.型技術協会の名の下での見学ということで,メインはクランクシャフトや高速ジョイントなどの鍛造用の金型でした.他にもダイカスト用の金型もありました.今年できたばかりの工場に引越してきて間もないということで,まだ生産ラインのレイアウトには余裕があるように見えました.
 鍛造用の金型は消耗が激しく,特に冷間鍛造用のものは消耗が著しいうえに精度も厳しいので,一つの金型で一万ショット程度しか打てません.これは射出成形やダイカストの金型と比較してかなり短命です.そのため,この工場では半年で250型というペースで金型を作っているそうです.品質工学の手法を使って加工条件を徹底的に検証しているということです.切削は全てドライのように見えましたが,もしかするとセミドライかもしれません.
 やはり,工場はいいですね.和みます.今日も撮影は不可でしたので,残念ながら写真はありません.

2008年12月15日月曜日

環境調和型ライフサイクル研究ステーション講演会

 今日の午後13時から,学内で開催された「環境調和型ライフサイクル研究ステーション講演会」に参加しました.私もこの研究ステーションのメンバーです.13時からの私の講義は,この講演会への参加に替えました.色々な人の話を聞いた方が,学生のためにもなるでしょう.
 最初の講演は,産総研の研究員の人が「製品ライフサイクルのトータルパフォーマンス設計-持続可能なものづくりを目指して-」という題目で講演されました.これはLCA, Life Cycle Associate の話題でした.私も自分の講義で少し話をしていますが,やはり専門に研究している人の話は洗練されていますね.とてもよく理解できました.学生達もこのような研究分野があることがわかって,よかったのではないでしょうか.
  15時からは研究ステーションメンバーの講演でした.はじめに,T科の新人TN先生が「施設配置問題と時間軸を導入した新展開」という題目で講演されました.コンサート問題,身近で分かりやすい問題設定ですね.これもよくわかりました.
 次は,DB大学のII先生「貯蔵不可能な商品を原資産とする先渡契約に対する価格評価の枠組み」難しいことを考えているのですね.すいません.よくわかりませんでした.
 最後は,大学院生UN君「部品表に基づく製品情報データベースに関する研究」 これは,目的は違いますが,私の研究室で取り組んでいる作業設計支援システムと同じにおいのする研究です.やっぱり,何でも書いておこうというプロダクトモデル,使えませんよね.今後の進展が楽しみです.
 18時から講演者も含めたメンバーで忘年会も兼ねた懇親会を学内のレストランで行いました.昔の計算機などのオタク話にも花が咲き,とても楽しく談笑しました.

2008年12月14日日曜日

伸びる人とは

 今日はゴルフスクールの日でした.今年のゴルフと言えば,なんと言っても石川遼君ですね.ゴルフスクールでも,毎月必ず話題になっていました.17才という若さで,1年目からツアー優勝を果たし,年間獲得賞金も一億円を突破,賞金獲得ランキング5位,文句なしで新人賞を受賞しました.開幕当初は予選落ちが続くなど苦戦していたので心配しましたが,あれよあれよと調子をあげて気がついたらゴルフ界を盛り上げる存在になっていました.どのようなことでも,若い人が活躍するのは大変喜ばしいことです.これからも応援したいと思います.
 遼くんは,誰からも好かれる好青年(?)ですが,一番感じるのは,その素直さです.人は他人から多くを学んで成長していきますが,素直な人ほど成長すると言われています.遼くんを見ていると,本当にそうなのだなと思います.私が世話した学生を振り返ってみても,素直な学生は配属時の実力はいまひとつでも,言われたことを着実にこなしていき,そのうち自分の考えを持つようになり,最後は見違えるように力をつけて卒業していきます.言われたとおりにやればよいというわけではありませんが,自分が知らないことやできないことを素直に認識することは大事ですね.
「下手糞の上級者への道のりは 己が下手さを知りて一歩目」