2011年9月8日木曜日

樹脂と自動車

 2011年9月7日水曜日は,「第101回型技術セミナー 自動車・航空機分野における先端材料と加工技術の現状」で司会をするために,名古屋の東レ「オートモーティブセンター(AMC)」に行って来ました.
 AMCは,「自動車・航空機」分野を強化し,組織横断的にソリューションを提供するために2008年に開設された,東レの技術開発拠点です.最近,ボーイング787の素材にCFRPが採用されたことなどからもわかるように,自動車や航空機の素材を,樹脂などの他のものに替えることが検討されています.私も,機械の性能を向上させる手段に行き詰ったときは,素材を替えることが有効と考えているので,このような動きには注目してきました.今回のセミナー,告知期間が3週間と大変短かったにも関わらず,あっと言う間に定員に達してしまいました.テーマに対する注目度の高さが分かります.
 最初に,AMCの施設を見学しましたが,自動車に使われる樹脂素材について,ユーザーからのいかなる要望にも応えられるように,素材を使って成形したり,評価したりするための設備が多数導入されていました.ショールームも,非常にわかりやすく整理されていました.
 見学に続いて,二件の講演がありました.樹脂を自動車の素材として適用する試みが,ヘンリー・フォードの時代からなされていたことを知って驚きました.長い時間をかけて熟成されてきた(?)試みが,いよいよ本格的に検討される段階にあるのだと実感しました.質疑応答も活発で,大変充実したセミナーになったと思います.
 熱田から名古屋に向かう帰りの電車の中で,芝浦工業大学の先生や柏崎にある会社の社長さんと,樹脂と自動車の今後について議論しました.実用化・事業化に向けては,色々と課題はありますが,一番の問題は「リサイクル」だろうということでした.例えば,車のアウターパネルは,凹んだり裂けたりしても,板金の技術である程度は補修することが出来ますが,樹脂の場合は,破損したパネルを交換するしかありません.金属部品は,鉄くずなどにして再利用することができますが,樹脂部品は焼却するしかありません.
 また,「イメージ」の問題もあります.強度が十分であることを,頭では理解できるのですが,石器から鉄器に代わって以来,長い年月を重ねて確立されてきた金属の「安定感」や「安心感」を超えるには,やはり長い年月が必要なのではないでしょうか.しかし,これは普及すれば,あっという間に変わってしまうものなのかもしれません.
 ここまで書いて,金属にこだわっている保守的な自分に驚いています.樹脂素材の普及は必然的だと思いますが,まだまだ,金属にも頑張って欲しいものです.

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