という文庫本を,昨日一日かけて読みきりました.一日で本一冊を読みきるというのは本当に久しぶりです.作品の面白さというより,取り上げているテーマが私に合っていたのでしょう.
作品の内容については,解説の文章を引用しながら説明すると,ある姉弟が特攻で戦死したと伝え聞いている自分達の祖父の謎の人物像を,祖父の戦友たちの証言によってつまびらかにしつつ,太平洋戦争の実情,兵の命を軽んじ,作戦の失敗の責任もとらないエリート将校たちの夜郎自大さを鋭く暴きながら,予想外のクライマックスを迎えるというものです.
太平洋戦争史について詳しく解説する文章が随所にありましたが,私は小学生の頃から太平洋戦争に関係する書籍を積極的に読んできたので,新たな知識は一割程度でした.しかし,太平洋戦争に関する本を読んだのは久しぶりだったので,よい復習になったと思っています.太平洋戦争のことをあまり知らないという人は,大まかな知識を得るという目的だけでも,この本を読む価値はあると思います.太平洋戦争を勉強すると,人間や組織としての反面教師をたくさん知ることになります.現在起こっている人間や組織の問題を見ると 「この人たちは過去に起こった戦争のことを,まったく勉強していないのだろうな」 と感じることがあります.
今の学生は,太平洋戦争史なんて知らない人が多いのでしょうね.真珠湾攻撃やミッドウェー海戦ぐらいは知っているのでしょうか.正直,疑問です.昔,研究室のある学生が終戦の日なんか知らないというので,「平和をうんぬん言いたいなら戦争のことを知らないとダメだ」 と説諭したところ,「先生は戦争の知識がないと平和を語れないのですか.戦争のことを知らなくても平和が大事だと言うことは,誰でも理解できます」 と食ってかかられたことがあります.戦争が起こった原因や経緯を知らずに,どうやって戦争を防ぐことができるのでしょう.このとき,もう日本はダメだと思いました.
話がそれました.どうも最近,愚痴っぽくていけません.特攻の話になると,私は普通ではいられなくなるのです.今回も,作品の内容で泣くということはありませんでしが,特攻に関係する子供の頃の記憶を思い出して,泣かずにはいられませんでした.
私が小学生の時,母方の親戚一同で鹿児島の知覧特攻平和会館に行ったことがあります.知覧特攻平和会館の詳細については,次の観光案内のコンテンツをご覧ください ⇒「鹿児島県南九州市」
ビデオコーナーには,それまで見たことのなかった特攻隊の出撃から突入までの映像が流されていました.敵艦に突っ込む特攻機.きりもみで墜落していく特攻機.空中で爆散する特攻機.一緒に見ていた父が言いました.
「全部,人が乗っているんだぞ」
「 … 」
「無念だったろうなぁ」
特攻隊員の写真・遺書・絶筆が,たくさん展示してあるコーナーがありました.一緒に見ていた母が言いました.
「みんなきれいな字だね」
「 … 」
「普通の人には書けないね」
子供の頃の記憶は次第に薄れていくものですが,このときの記憶は薄れることはありません.特攻では何千人という人が犠牲になりましたが,それらの人たちが生きていれば,戦後は十二分に活躍されて,今の日本はもっといい国になっていたに違いありません.我々には,このような愚かな作戦が行われてしまったという事実やその理由を理解し,確実に後世に伝えていく義務があると思います.
私にここまで書かせるきっかけとなった「永遠の0」,やはり名作なのかもしれません.
2010年9月5日日曜日
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