2010年4月20日火曜日

ハワイ残留邦人の思い出

 アイスランドの火山の噴火で,ヨーロッパに居る人が日本に帰って来れないという状況が続いており,2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの時の状況と比較されています.私は当時,お盆休みを9月に集中して,家族4人でハワイ旅行に行っていました.
 ハワイ島,マウイ島,アウアイ島,オアフ島の4つの島を順に巡るという4泊5日のツアーで,マウイ島からカウアイ島に移動する予定だった日が9月11日でした.早朝,事務局からフライトは全て中止になったという電話があり,何があったのだろうとテレビをつけてみると,飛行機が高層ビルに突っ込んでいく映像を繰り返し流していました.よくできた特撮だと思って説明を聞いているうちに,ニューヨークで実際に起こった惨劇だということを知り,愕然としたことを覚えています.
 まず,マウイ島に追加で2泊することになりました.マウイ島からオアフ島に移動することになったとき,これでやっと日本に帰れると思ってい喜んだのもつかの間,国際線は復旧していませんでした.復旧する予定もないということでした.呆然とする両親と妹を励ましながら,部屋に閉じこもっていても気晴らしにならないということで,ダイヤモンドヘッドやハナウマベイなど,観光できるところは全て観光してまわりました.ワイキキビーチに行った時は本当に人気がなく,テレビや写真で見た雰囲気とはまったく別物でした.
 ビーチ近くの公園では,たくさんのアメリカ人の若者が野宿をしていました.気になったので,そのうちの1人と会話してみると「もう,帰りの飛行機代しか残っていないので,野宿するしかない」ということでした.貯金もないということでした.「親に連絡してお金を出してもらったらどうか?」と提案したら,大変にびっくりされて「日本人の子供は,親から金をもらえるのか?日本人には負けたよ」と皮肉たっぷりに言い返されてしまいました.日本とアメリカの親子関係は,ずいぶん違うということを実感した出来事でした.
 滞在中,夜は本を読んでいました.しかし,そんなに読む時間はないだろうと予想して,一冊しか持ってきていませんでした.それも,ドフトエフスキーの「罪と罰」の新潮文庫版で,上下巻のうちの上巻のみ.もっと明るい作品を持ってくれば良かったと後悔しましたが後の祭りでした.しかし,結構夢中になって読んでいました.最後の方は日本語に飢えていたので,3回ぐらい読み返しましたね.あまりに熱心に場の雰囲気にそぐわない本を読んでいるので,周りの日本人から変な目で見られてしまいました.
 オアフ島に3泊した後,やっと日本へ帰る便が割り当てられました.最終的に10泊11日という,今後も絶対に取ることは出来ないであろう長期休暇となりました.今となっては,いい思い出です.でも,ハワイにはもう一度行ってみたいと思っています.私の家族は,もうこりごりという様子ですが.
 今回,ヨーロッパから帰って来れない日本の人達の報道を見て,当時の日本もこのような雰囲気で,私みたいな目線で被害者の人達を見ていたんだろうなと思いました.当事者は本当に大変だと思いますが,あせらず,落ち着いて,ゆっくり帰ってきて欲しいと思います.

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