2012年11月13日火曜日

3次元CADを教えるということ

 後学期から,3年生に3次元CADを教えています (教えているというより,やらせているという方が正しいですが…) 出だしてつまづいて,学生達には大変な迷惑をかけてしまいましたが,なんとか軌道に乗ったというところでしょうか.正直,3次元CADに馴染めない学生が何人か出てくるだろうと覚悟していたのですが,私の視点からは,脱落する人もほとんどなく,全員,積極的に実習に取り組んでくれているように見えます.とにかく,3次元CADが当たり前という感覚を持って欲しかったので,密かに喜んでいるところです.

 2次元製図と3次元CAD,両方を肯定する人は少ないように感じます.私自身は,3次元CADでないと対応できない5軸制御加工を専門としているので,どちらかというと3次元派なのかも知れませんが,大学でものづくりを教える教員の立場として,2次元製図を否定する気は毛頭ありません.2次元図面の良いところは,たくさんの情報が一度に把握できるという点ではないでしょうか.特に交差に関する情報などは,3次元CADでも交差表現が規格化されるとはいえ,一度に見ることができる情報量は,2次元図面の方が圧倒的だと思います.

 3次元CADの良いところは,「分かりやすさ」 だと思います.2次元図面から3次元形状を把握する能力は,かなりの訓練を必要としますが,見ただけで製品形状を理解できる3次元CADの表現力は圧倒的です.今更,謙遜する気にもなれない.金型の設計に,3次元CADを使わないなんてことは,今ではあり得ないでしょう.誤解を恐れず言えば,2次元図面の方がごまかしがきくと思います.3次元CADで定義されていることは,正しく現実であり,3Dプリンタを使えば,そのとおりの形状を得ることができます.

 では,2次元図面を一切止めて,誰もが3次元CADを使うべきなのでしょうか? 3次元CADが嫌いな人から,「作れもしないものを,気楽に設計して持ってくる」 という意見をよく聞きます.そして,私もそのとおりだと思っています.計算機上でなんでもできてしまうので,どう作るかなんて考えることなく,見かけだけを重視して設計してしまう.モノを知らないと書けないのが2次元図面であり,モノを知らずに使ってはいけないのが3次元CADだと思うのです.

 今日提出された課題を採点してみたところ,「確かによくできているけど,これ,どうやって作る気なんだろう?」というデータがいくつか見られました.これまでは,3次元CADの面白さや有用性を実感してもらおうと進めてきた講義ですが,そろそろ,「ものづくり」という本質的な視点から取り組むように指導しなければならないと感じています.

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