2013年5月28日火曜日

「東成エレクトロビーム㈱」を見る

「たまの力 ~多摩ブルー・グリーン倶楽部会員企業のNEXT STAGE~」 の取材のために,平成25年5月27日(月)の午前は,東京都西多摩郡瑞穂町にある 「東成エレクトロビーム株式会社」 を訪問しました.以下,「である」調で書かせていただきます.


  東成エレクトロビーム㈱は,電子ビームの将来性に早くから着目し,他に先駆けて電子ビーム溶接のジョブショップとして1977年(昭和52年)に創業.以来,電子ビーム・レーザ加工の 「日本最大のジョブショップ」 として,研究開発・試作から量産まで,幅広く対応している.
  電子ビームとは,電子をビーム状に収束・加速して得られる粒子線である.電子銃の中の陰極フィラメントを真空中で加熱すると,熱電子が連続的に放出される.この熱電子が,電子銃の陰極と陽極の間にかけられた高電圧による強力な電場で加速され,ビーム(電子の流れの束)となる.この電子ビームを電磁的なレンズで絞り込み,溶接部へ照射すると,極めて短時間で電子の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され,この発熱により材料の金属が溶融し,溶接が行われる.
  電子ビーム加工は,従来の加工法と比較して,エネルギー密度が非常に高く,熱が影響する範囲を最小限に抑えることが出来るため,細く深い溶けこみ形状が得ることができる.そのため,綺麗で歪みのない強力な接合が可能となり,従来の加工方法では不可能であった異種金属間接合,超微細加工(穴あけ加工,溝加工,切断加工等),高強度接合,高精度加工を実現するとともに,工程短縮,コスト削減,環境負荷低減等の目的にも大きく寄与している.
  東成エレクトロビームでは,航空宇宙関連の高信頼性部品や,特殊車両向けの高精度部品,その他高品質が要求される溶接加工に,電子ビーム及びレーザ加工技術を活用して,あらゆる業種の様々な技術的課題の解決に取り組んできた.電子ビーム・レーザの技術を,様々な素材の加工に適用し,ユーザーからの多種多様な要求に合わせて使いこなしてきた経験とノウハウが,東成エレクトロビームの大きな強みとなっている.
  2014年(平成26年)に打ち上げ予定となっている小惑星探査機 「はやぶさ2」 のプロジェクトにも協力している.このプロジェクトのハイライトとなるのは,搭載された衝突装置で,小惑星の表面に人工クレーターを作るというタスクである.衝突装置は,じょうごのような形をしたステンレス製の構造体の中に爆薬を詰め,銅製の円板でフタをしたような作りとなっている.探査機本体が小惑星の陰に隠れている間に爆薬に点火し,銅板を秒速約2キロメートルで小惑星の表面に衝突させて,表面を掘り返す.この衝突装置の,直径30㎝の銅板を,ぐるりと一周にわたって,一様な強度で,異種金属であるステンレスと溶接するという,プロジェクトの成否を握る難しい接合を任されているのが,東成エレクトロビームである.東成エレクトロビームが携わった部品が,様々なステージで極限に挑む.
  コーポレートステートメントとして,「Keep moving forward!!」 を掲げているが,これは,「常に変化し進歩を続けよう」 という意志を表明したものである.現在は,試作技術から量産技術に移行しなければならないという課題に直面しているが,変えてはいけないものと,変えなくてはいけないものがある.常に最新の設備に触れ続け,アプリケーションの提案力に磨きをかけ続ける.そして,試作技術にこだわってはいけない.

  「くっつけるのが好き」 という代表取締役社長の上野邦香さんは,やりたいこと,やらなければならないことを公言することによって,自分を追い込むことを日常としているという,とにかくストイックな方であった.「Next Stage」 として,今後の抱負を伺ってみたところ,まず,部品などででも自社ブランドを持って,メーカーになりたいということであった.これからの時代は,変化の予兆をつかむセンシング技術に活路があると見ている.実際,2025年までに,体内に埋め込んで血液の成分などをモニタリングする 「使い捨て生体検査センサ」 を,OEMメーカーとして量産したいそうだ.また,自身が惚れ込んでいる電子ビーム加工を徹底的にサポートするために,電子ビーム加工機そのものの自社開発にも,果敢に挑もうとしている.近い未来,「使い捨て生体検査センサ」「東成製電子ビーム加工機」 が,マーケットの新風となるであろう.←これを,プレッシャーにしてください(笑)

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