2010年4月11日日曜日

日本には,工作機械がある

 金曜日に出席した日本工作機械工業会の委員会で,日本の工作機械メーカーは,今後,どのような工作機械を作るべきかという議論がありました.今後,世界の工作機械は,低価格のものと高性能のものに二極化することが予想されます.
 低価格なものの生産は,中国が中心になります.中国は,昨年の工作機械生産額で世界第1位となりましたが,安い工作機械を大量に生産してあのような数字をたたき出しました.その額は,今後も伸びるものと予想されています.生産額1位の座は,しばらく中国のものとなりそうです.だからと言って,今後の日本は,このようなエントリーモデルといえる工作機械は作らなくてもよいかと言うと,そういうことにはならないと思います.事実,ファナックやブラザーが生産している小型の工作機械は,現在でも大量に中国に輸出されています.今後は,構造のモジュール化や最適化を図り,生産プロセスを再検討して効率化し,中国のものよりも安くて高性能な工作機械を生産する必要があります.中国より安いものというと難しく感じるかもしれませんが,日本の工作機械の構造や生産プロセスは,もう少しシンプルにできると思います.
 高性能な工作機械については,ドイツとの一騎打ちになると思います.先日の投稿でも主張したとおり,今後の機械加工は,工作機械,NC装置,CAMソフトウェアの要素技術を,いかに総合的に使いこなすかという方向に進むと考えています.しかし,この三つの要素技術のうち,工作機械本体については日本がやや優位だと思いますが,残りの二つについては,完全にドイツに負けていると判断せざるを得ません.例えば,ハイエンドの工作機械というと5軸制御工作機械を例にあげることができますが,現時点で高性能な5軸制御工作機械を求めると,必然的にドイツ製のものになってしまうという厳然たる事実があります.それは,ドイツがNC装置とCAMソフトウェアで,5軸制御加工のデファクトスタンダードという地位を確立しているからです.現在,日本の工作機械生産額は,ドイツに次いで第3位です.中国がエントリーモデルで1位となり,ドイツが高性能機で落ち込みを抑えた結果だと見られています.今年の生産額でドイツに敗れるようなことになれば,このような構図が続くものとみなされ,日本の工作機械の求心力が低下する可能性があります.今年はなんとしても第2位に浮上しなければなりません.
 ずいぶん悲観的なことを書いてしまいましたが,私は日本の工作機械生産額は今年で第2位に浮上すると確信しています.先週,多くの工作機械メーカーの人達と会話する機会があり,あきらめている方は一人もいませんでした.門外漢の私が一番悲観的だったようで,少し反省しています.日本の工作機械にも課題がたくさんあるのですから,それらを解決すればのびしろはまだまだ大きいと言えます.
 昨日,研究室のWebコンテンツを整理していて,私が研究室を一人で運営することになった2003年度から昨年度までの間に,私の研究室から工作機械を生産しているメーカーに就職した学生が,約10名もいることに気が付きました.なかには,課外活動や私の講義を通じて工作機械に興味を持ち,そのまま就職してくれた学生もいます.私には彼らの人生を左右した責任がある.日本の工作機械のために私が出来ることがあれば,何でも協力させていただくつもりです.

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