2010年12月7日火曜日

フェラーリと鉄瓶

という本を2回読みました.この本の著者である奥山清行氏はプロダクトデザイナーで,JIMTOF2010の時に開催された学生向けトップセミナーでの講演を聴いて感銘を受け,著作も読んでみようと思って購入しました.代表的な三つの著作の中で,このタイトルだけ文庫版が出ていて,買いやすかったということもありますが(笑)
 内容は,奥山氏の自身の遍歴?の説明から始まり,活動の拠点としていたイタリアの日常やものづくりの様子の紹介,デザインについての所見などと続きますが,特に最後の「6章 クリエイティブであり続けるために」と「7章 カロッツェリア的ものづくりへの挑戦」の章が印象に残りました.
 まず,個人を尊重したデザイン.奥山氏が活躍していたイタリアのデザインオフィスでは,自動車のデザインは分担せずに,一人のデザイナーが最後まで自分のコンセプトを貫いて仕事を仕上げるそうです.日本ならば,最初に素晴らしいデザインが採用されても,量産までに多くの関係者の様々な意見を取り入れていくうちに,魅力が消えていってしまうようです.良いデザインならば,その具現化を目指すという取り組み方に,大変感銘を受けました.このようなやり方ができるのは,フェラーリという高級車が対象だからだと思いますが,最近このブログでも話題にしたホンダのRX-Zを,デザインを貫いた量産車として注目しています.
 次に,地方から世界に直接発信するものづくり.大量生産方式に寄った大企業の活動は海外に流出し,今後の日本国内のものづくりは,量産品では手の届かないような細かな配慮が行き届いた高付加価値製品に対応できる中小企業の双肩にかかっていると私は考えています.奥山氏も,故郷の山形で,地方から世界に直接発信するものづくりに取り組んでおられます.中小企業自ら製品をプロデュースし,生産,販売まで行うという取り組みは,最近,ちらほらと見聞きするようになりましたが,世界に直接アピールするという発想は新鮮でした.
 この本,前半のまったりした内容から,次第に熱い内容になっていき,最後は夢中になって読んでいました.もう一度熟読して,奥山氏の別の著作も読んでみようと思います.ツイッター仲間のつぶやきでは,「伝統の逆襲」がオススメのようです.

1 件のコメント:

ucchan さんのコメント...

我田引水ですみません。
これぞ、まさにマイクロモノづくり。
ヨーロッパの中小企業などのモノづくりは、日本にとっても参考になる部分は多いと思います。

こちらの本もお勧めです。
小林 元
「イタリア式ブランドビジネスの育て方」 http://amzn.to/9McdFi



欧米でチラホラ話題になってきていますが、日本ではまだほとんど誰も知らない、Additive Manufactuirngの概念は、中小企業こそ把握していただきたいなと思います。
先生の研究とは、対極の加工方法ではありますが、私のような生産技術屋からすると、数量によってはこういうプロセスの方がいい場合が増えてくると考えております。
また、この加工方法でなければ出来ない造形というものも、デザイナーの方がこういう加工方法に触れることで、増えてくると思います。