平成22年10月1日金曜日,今日から後期の始まりです.午前11時からの(社)日本工作機械工業会 第4回技術懇談会企画委員会 に出席するために,東京タワーのふもとにある機械振興会館に行ってきました.この委員会,その名のとおり,技術懇談会を企画するためのものです.主に,先日,牧野フライス製作所に対して実施した訪問技術懇談会の成果について議論しました.
この懇談会は,大学の研究者グループが工作機械メーカー1社のみを訪問して,技術相談などに応じるというものです.従来からの複数のメーカーが集まる技術懇談会では,メーカー側が本音を語ることができないためです.当然ながら訪問する研究者には守秘義務が課せられ,相談内容が外部に流出することがないように配慮されています.訪問時に解決できるような簡単な相談ばかりなら問題はないのですが,ほとんどの相談が何らかの調査や研究を要するもので,当然,専門の研究者との共同研究を検討することがあります.今日の議論は,大学と企業の共同研究のあり方について,かなり踏み込んだ議論となりました.
企業側としては,大学の研究者に必要な機材や経費を提供して期限までに結果を出してもらうというやり方を期待するでしょう.しかし,普通の大学の研究者は,研究活動だけに専念することは不可能です.教育,地域貢献,学外活動など,やるべきことがたくさんあります.では,学生にやってもらうのはどうかと考えると,学生には研究室のテーマに集中して研究して欲しいというのが,教員としての本音であります.企業から依頼されるテーマが,私のやりたいことと合致していれば問題ないのですが,そのような経験はほとんどありません.
大学の研究者側としては,研究室の設備は使ってもいいですし,相談にも乗りますが,実際の作業は企業の方にやって欲しいと思います.活動場所は会社でもよいですし,大学の研究者に相談するだけでもよいでしょう.内容によっては,卒業研究ぐらいのテーマにはなりそうなものがあります.そのようなときは,卒研生を担当させてもよいですが,月に2,3回は大学に来て学生とミーティングするなど,そのテーマについては責任を持っていただきたいのです.研究が進むにつれて内容が充実し,そのテーマで学位を取るようなことになれば,とてもすばらしいことだと思います.
午後14時からは,第40回産学技術懇談会が開催されました.この日の話題提供の講師の方は,昭和精工株式会社 副社長 KDさんと,株式会社大槇精機 製造部技術課 MTさんです.KDさんもMTさんも,私が話題提供を依頼させていただきました.お二方とも,海外の工作機械を活用しているユーザーの立場から,
KDさんは,昨年の型技術協会の技術交流会の会場としてお世話になって以来の知り合いです.m-shige's log: 第101回 型技術交流会 来年6月に開催が予定されている型技術者会議2011の実行委員にもなっていただいており,お願いしてばかりで恐縮しています.これ以上お願いすると逃げられそうなので,しばらく控えたいと考えております.
MTさんは,ツイッターで知り合った方で,5月末には工場見学までさせていただきました.m-shige's log: 大槇精機見学 5軸制御加工については,歯に衣を着せないスルドイつぶやきの数々.この講演のために,昨晩はボツボツつぶやきながら徹夜で準備してくださったようです.申し訳ないとは思いつつ,朝から講演を楽しみにしておりました.今日は,社長のOMさんも同行してくださいました.それにしても大槇精機のツートップのお二人は,上背がある上にがっしりとしていて迫力があります.企業委員のみなさん,入室してきたお二人を見てビビっていました.
昭和精工のKDさんの話題提供は,会社の業務内容が中心でしたが,大槇精機のMTさんは,ユーザーから工作機械メーカーへの提言ということで,かなり手厳しいご意見をいただきました.
「我々は工作機械を使うスペシャリスト.メーカーには,工作機械を作るだけではなく,設計,NC制御,調整,組み立て,評価など,関連する技術すべてのスペシャリトになってもらいたい」
要するに,現在の工作機械メーカーは,自分たちが提供している機械すらサポートできていないということです.厳しいですねぇ.しかし,知り合いの加工メーカーの方からも,同じような意見を聞いたことがあります.「日本の工作機械を良くするために協力は惜しまない」というお言葉もいただきました.顧客であるユーザーにこんなことを言わせてはいけません.私も含めて関係者一同,猛省しなくてはいけません.
この日の技術懇談会,これまでにないほど充実したものとなりました.これも,言いにくいことをきちんと言っていただいた講師の皆さんのおかげです.心より御礼申し上げます.
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1 件のコメント:
ユーザーの方の意見は厳しいですね。
でもそれが製品の品質向上を生み出すということは、意外と海外メーカーの方が理解されているようです。
日本で鍛えられ、世界でその評価を付加価値として展開する。
CADCAMといい、工作機械といい、日本のメーカーは意外と現場の意見を聞いていないような気がします。
メンテナンス性が悪い機械が多いですねぇ。
設計者さんはきっと自社製品で仕事をした経験がないのではないでしょうかねぇ。
(現役エンジニアだった数年前の事情ですので現在はそんなことはないと信じたいのですが…)
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